REPORT 012
2021.02
新型コロナ治療薬は信用できるか
新型コロナ感染症が重症化して死にいたる人が増えているため、コロナ治療薬に大きな期待が寄せられています。実際にも数種類の治療薬が、日本でも欧米でも使われています。
それらは、㋑従来から(別の疾患に)使われていたものを新型コロナに転用したクスリ。㋺新しく開発されたクスリ。この2タイプに分かれます。
㋑、㋺のどちらも、新型コロナが流行しだしてから研究が始まったため、開発や効果の確認のための時間は1年もなかったわけです。そんな短期間に、信頼できるデータが得られるものでしょうか。
ここでは日本でも使われている①ステロイド(副腎皮質ホルモン)と、②レムデシビルについて、研究報告論文中のデータ(グラフ)を転載します。両者については、拙著『こわいほどよくわかる 新型コロナとワクチンのひみつ』ビジネス社(2021年3月22日発売予定)で解説していますが、グラフを載せていないので、ここで紹介する次第です。
それぞれの治療薬が信頼に値するかどうか、(将来それらのクスリを使われる可能性がある)読者各自が判断してください。
①ステロイド
ステロイドはいろいろな種類がありますが、合成薬「デキサメタゾン」が一部の患者に有効だと発表されています。
図1は、イギリスで行われた「比較試験」で、いろいろな重症度の人たちを、デキサメタゾンを使用するグループと、使用しないグループに分けて、その後の「死亡率」を調べています。
図のAは、全患者の死亡率(Mortality)を示しており、「Usual care」とあるのが「通常の治療群」、「Dexamethazone」が通常の治療にデキサメタゾンを加えたグループです。
図のBは、人工呼吸器を用いたグループで、デキサメタゾン群の死亡率がかなり下がっています。
Cは(鼻からのチューブなどによる)酸素を吸入しているグループです。死亡率は下がっていますが、B(人工呼吸器を用いた場合)ほどではありません。
Dは、酸素吸入をしていないグループです(つまり、重症でない患者たち)。デキサメタゾンを使ったグループのほうが、死亡率が高くなっています。
この研究結果から、新型コロナで重症化した人にはデキサメタゾンを使った方がいい、ということになっています。また、重症でないケースでは、使ってはならないと。
この研究は英国の多数の病院・医師が参加して実施されています。そして肝腎なことには、論文の著者に製薬会社の社員が含まれておらず、それが論文(研究)の信頼性を高めています。
②レムデシビル
レムデシビルはいわゆる「抗ウイルス薬」で、新型コロナウイルスの複製をさまたげ、「複製数」を減少させると言われています。従来から「エボラ出血熱」の治療薬として開発が勧められていたのですが、急遽、新型コロナ治療薬として転用をはかったものです。
日本でも、米国でも緊急承認され、実地に使われています。その根拠となった「比較試験」を紹介しましょう。
試験は米国を中心として、日本やメキシコなどをまきこんで実施されました。重症度が異なる入院患者、総計1062人を2つのグループに分け、片方は定期的にレムデシビルを注射し、他方は「生理食塩水」を注射した「プラセボ群」です。
その試験の結果を図2に示します。
縦軸は、新型コロナの症状が回復(軽快)した患者さんの「割合」(率)。横軸は、症状が回復するまでの日数です。
図2のAは、1062人全体での結果(成績)。レムデシビル群のほうがプラセボ群より回復傾向が良好であることがわかります。
以下、図Bは酸素を使用していないグループ、図Cは酸素を使用しているグループ、図Dは高濃度酸素を吸引しているけれども、人工呼吸器は使用していないグループです。そして図Eは、人工呼吸器や「エクモ」を装着されたグループです。
結局、人工呼吸器が必要になる重症患者では効果がないけれども(図E)、全体的にみると効果がある(図A)とされて、レムデシビルは日米で緊急承認されました。
ところがその後、WHO(世界保健機関)は、レムデシビルの「不使用」を勧告しました。死亡率の改善が示されておらず、副作用など種々の不利益があることが理由です。
先に紹介した試験結果とは異なり、レムデシビルの「新型コロナからの回復効果」を否定した比較試験結果も示されています。
それは、中国を中心に実施された試験で、新型コロナ肺炎で血中酸素濃度が低下した236人の患者を、レムデシビル群と「コントロール群」(=プラセボ群)に分けています。
結果を図3に示します。縦軸は「累積の回復率」で、横軸は試験開始からの「日数」ですが、両群で回復率に違いが見られません。
これらレムデシビルに関する2つの比較試験結果は矛盾しています。矛盾するというのは、少なくとも片方が間違っているということ。さて、どちらの試験結果が間違っているのでしょうか。
一般論として、「有効だった」という比較試験結果よりも、「無効だった」という試験結果のほうが信頼性は高いです。膨大な手間ひまと資金をつぎこむ臨床試験を実施する研究者らは、「有効だった」という結果がでることを期待し、一所懸命に努力するのです。場合によっては多少のインチキを試みるかもしれない。それなのに「無効」という結果が出たら、これはもう本当に無効なのだ、と思うしかないでしょう。
これに対し、「有効」という結果は、試験実施中のインチキや、各病院から集められたデータを操作することで「作出」されたものかもしれない。
製薬会社(とその社員)が試験の実施やデータ解析に関与しているかも着眼点です。
この点図3の論文(研究)は、製薬会社が関与していません。これに対し有効性を認めたという図2の論文には、製薬会社が関与しており、共同著者に会社社員の名があります。こういう場合、試験実施からデータ処理にいたるまで、製薬会社が仕切っていることが大半です。
したがって僕は、2つの(矛盾する)比較試験のうちでは、レムデシビルの「無効性」を示した図3の論文(研究)のほうが信頼できると思います。
ただしかし、論文になった研究は全部信頼できる、と考える読者もおられるでしょうから、最終判断はお任せします。
なお本HPには、以下のようなレポートもありますので、参考にしてください。
レポートの目次:①~⑪はコロナ以外の事項についてのレポート
レポート⑬:ワクチン副作用(死)の判断方法
レポート⑭:インフルエンザも「ただの風邪」
レポート⑮:新型コロナワクチンの副作用
レポート⑯:ワクチンによる副作用死を隠ぺいした実例
レポート⑰:ワクチン後に死亡した6人の本当の死因