REPORT 003
2017.11
塩分と高血圧と寿命
塩は体によくない。塩を余計にとると高血圧になり、短命になる。でも減塩すると、血圧が下がり、寿命が長くなる、と言われています。
本当でしょうか。
日本人の塩分摂取量は、一日平均が男性10.8g、女性9.2g。
ラーメン1杯で塩分が6gなので、お代りは無理ですね。梅干し1個が2g、味噌汁が1.5gです。
ところが日本高血圧学会が推奨する摂取目標は、男女とも6g未満。
WHO(世界保健機関)はさらなり。男女とも5g未満です。
こんなに減塩したら、食事はさぞ味気ないものになるでしょう。
ところが、世界中の研究結果を調べてみても、減塩を正当化する研究結果はありません(Am J Hypertens 2016;29:543)。
その論文では、こう述べています。
●世界人口の90%は、6.7g~12.5gの間にあるから、6g未満だと、世界の60~70億人が食事内容を変更しなければならない。
●そのような過激な勧告は、確実なエビデンスにもとづくべきだが、エビデンスは存在しない。
●肥満や高血圧の人を2群にわけ、片方の食塩摂取量を6gに下げた(6g未満ではない)比較試験では、塩分制限は寿命になんの影響も与えなかった。
図は、世界中の10万人以上を調査した研究結果です。
グラフの横軸はナトリウム量なので、塩分量を求めるには、数値を2.5倍します(N Engl J Med 2014;371:612)(https://www.nejm.org/doi/pdf/10.1056/NEJMoa1311889)。
グラフから、塩分にして10g~15gの人たちの総死亡率が最も低くなっていることがわかります。
それより少ないと、総死亡率が高くなる、つまり寿命が短くなります。
それなのになぜ、高血圧学会などは減塩を推奨するのでしょうか。
ひとつには、高血圧は老化ではなく病気だ、という印象を与えたいのではないか。
また、血圧が高めの人に、単に「血圧を下げろ」でなく、「減塩しなさい」と付け加えたほうが、一層お医者さんらしく見える、という効果もあるのでしょう。
血圧をクスリで下げると寿命が縮むことについては、レポート⑥参照。