REPORT 006
2017.12
高血圧は老化現象だ
高血圧と診断するための「基準値」は、どのくらいが適切でしょう。
2010年の推計では、日本には「高血圧」の日本人が4300万人(男性2300万人、女性2000万人)もいるそうです。(日本臨床 2015;73:1803)
高齢者は年々増えていますから、いまの推計は5000万人以上でしょう。
それほど病人(?)が多いのは、基準値の設定が低すぎるからです。
むかしの高血圧の基準は「その人の年齢に90~100を足したもの」でした。
70歳なら、上の血圧が160~170で高血圧、80歳だと170~180です。
しかし「日本高血圧学会」は基準値を改定し、いまは年齢にかかわらず、上の血圧が140以上(下の血圧は90以上)で高血圧と診断されます。
この基準値(140/90)で高血圧とされる人の割合は、
男性(%) | 女性(%) | |
---|---|---|
70歳代 | 81 | 71 |
60歳代 | 66 | 62 |
50歳代 | 63 | 38 |
40歳代 | 30 | 13 |
30歳代 | 20 | 6 |
となっています(2010年。前掲日本臨床)。
血圧が高い人の割合が、高齢になるほど増えるのは「高血圧は老化現象」だからです。
動脈は歳をとるほど硬く、細くなるため、だれでも血液の流れが悪くなります。
そのままでは大切な脳に十分な血液がとどかないので、人体は心臓が強く打つよう自己調整して血圧を上げて、脳への血流を確保します。
つまり、年齢プラス90~100という高血圧基準は、とても理にかなっていたのです。
ところが高血圧学会はいきなり、老いも若きも同じ、低い基準値を打ちだしました。
それを正当化する、たとえば「基準値を引き下げて治療すれば人びとの寿命が延びる」などのデータは、なにもなかった。
そう、高血圧学会はなにがなんでも「高血圧患者」を増やしたかったのです(拙著『健康診断は受けてはいけない』参照)。
実際、基準値を下げたためにクスリ(降圧剤)の売上高は六倍増となり、一兆円を超えました。
では、人びとの健康度は改善したのでしょうか。
参考になる比較試験の結果があります。
70~85歳の日本人で、昔の基準なら「正常血圧」とされた、上が150~180、下が90~100の人を集めた試験です。
そういう329人を、クスリを飲ませる「降圧剤」グループと、ニセ薬を飲ませる「プラセボ」グループに分けました。
約2年の試験期間のあいだに死亡したのは、両グループとも同じ1名ずつ。
ところが脳梗塞の発症者数は、
【脳梗塞の発症数】
プラセボ | 5人 |
---|---|
降圧剤 | 8人 |
と、5割増し。がんの発症数は、
【がんの発症数】
プラセボ | 2人 |
---|---|
降圧剤 | 9人 |
と、4倍に増えました(臨床医薬 2000;16:1363)。
それぞれの体が、年齢に応じて血圧をベストの状態に調節しているのに、根拠もなくクスリで引き下げるから、いろいろ不都合が生じるのです。
血圧を無理に下げると脳の血流がとどこおり、血管内で血液がかたまって、その先の脳組織が死滅します(脳梗塞)。
また一部の降圧剤には、発がん性があるようです。
別の比較試験では、血圧を下げると死亡数が増えている。そこから割り出すと、年間2万人もの日本人が、降圧剤で亡くなっています。(いずれ本レポートで紹介します)。
今回の教訓は、
- ① 年齢プラス90~100という、むかしの高血圧基準のほうが理にかなっている
- ② けれども、どんな基準値で「高血圧」とされても、降圧剤で下げるのは危険
- ③ 老化現象にクスリをつかってはいけない
- ④ だから、血圧を測定する意味もない
ということです。