近藤誠がん研究所

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治療の真実を知ろう!

近藤誠
重要医療レポート

REPORT 006

高血圧は老化現象だ

高血圧と診断するための「基準値」は、どのくらいが適切でしょう。

2010年の推計では、日本には「高血圧」の日本人が4300万人(男性2300万人、女性2000万人)もいるそうです。(日本臨床 2015;73:1803)

高齢者は年々増えていますから、いまの推計は5000万人以上でしょう。

それほど病人(?)が多いのは、基準値の設定が低すぎるからです。

むかしの高血圧の基準は「その人の年齢に90~100を足したもの」でした。

70歳なら、上の血圧が160~170で高血圧、80歳だと170~180です。

しかし「日本高血圧学会」は基準値を改定し、いまは年齢にかかわらず、上の血圧が140以上(下の血圧は90以上)で高血圧と診断されます。

この基準値(140/90)で高血圧とされる人の割合は、

男性(%) 女性(%)
70歳代 81 71
60歳代 66 62
50歳代 63 38
40歳代 30 13
30歳代 20 6

となっています(2010年。前掲日本臨床)。

血圧が高い人の割合が、高齢になるほど増えるのは「高血圧は老化現象」だからです。

動脈は歳をとるほど硬く、細くなるため、だれでも血液の流れが悪くなります。

そのままでは大切な脳に十分な血液がとどかないので、人体は心臓が強く打つよう自己調整して血圧を上げて、脳への血流を確保します。

つまり、年齢プラス90~100という高血圧基準は、とても理にかなっていたのです。

ところが高血圧学会はいきなり、老いも若きも同じ、低い基準値を打ちだしました。

それを正当化する、たとえば「基準値を引き下げて治療すれば人びとの寿命が延びる」などのデータは、なにもなかった。

そう、高血圧学会はなにがなんでも「高血圧患者」を増やしたかったのです(拙著『健康診断は受けてはいけない』参照)。

実際、基準値を下げたためにクスリ(降圧剤)の売上高は六倍増となり、一兆円を超えました。

では、人びとの健康度は改善したのでしょうか。

参考になる比較試験の結果があります。

70~85歳の日本人で、昔の基準なら「正常血圧」とされた、上が150~180、下が90~100の人を集めた試験です。

そういう329人を、クスリを飲ませる「降圧剤」グループと、ニセ薬を飲ませる「プラセボ」グループに分けました。

約2年の試験期間のあいだに死亡したのは、両グループとも同じ1名ずつ。

ところが脳梗塞の発症者数は、

【脳梗塞の発症数】

プラセボ 5人
降圧剤 8人

と、5割増し。がんの発症数は、

【がんの発症数】

プラセボ 2人
降圧剤 9人

と、4倍に増えました(臨床医薬 2000;16:1363)。

それぞれの体が、年齢に応じて血圧をベストの状態に調節しているのに、根拠もなくクスリで引き下げるから、いろいろ不都合が生じるのです。

血圧を無理に下げると脳の血流がとどこおり、血管内で血液がかたまって、その先の脳組織が死滅します(脳梗塞)。

また一部の降圧剤には、発がん性があるようです。

別の比較試験では、血圧を下げると死亡数が増えている。そこから割り出すと、年間2万人もの日本人が、降圧剤で亡くなっています。(いずれ本レポートで紹介します)。

今回の教訓は、

  • ① 年齢プラス90~100という、むかしの高血圧基準のほうが理にかなっている
  • ② けれども、どんな基準値で「高血圧」とされても、降圧剤で下げるのは危険
  • ③ 老化現象にクスリをつかってはいけない
  • ④ だから、血圧を測定する意味もない

ということです。

近藤誠

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